ちゃんと世の中、正しく進化している

アナログとデジタル、両方の時代の経験者TOMAがたまには真面目に。。
・・少しカタイお話し。興味のない方には退屈です。
SAXとは関係ありません。
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その昔、僕がビクタースタジオのメンテナンスエンジニアをしていた頃の話。
デジタルのデの字も無いアナログ時代のこと。録音用マスターはアナログ磁気テープ。
テープ幅は4分の1インチ、10インチのリールに巻いて、テープの走行スピードは一秒間に15インチ(38cm)で録音時間は30分が主流だった。

そのテープを使用するテープレコーダーの管理が僕の仕事の一つ。

「標準テープ」という、テープレコーダーを管理するためのテープを使用し、常に特性を確認調整する。
ヘッド(下の写真:テープから音楽信号を拾い出す大切なところ)の角度調整、脱磁、清掃、摩耗チェック。

さらに様々な項目がある。
テープ走行のふらつきが出ていないか、測定器でチェック。
音楽の再生ピッチや時間が変わらないようにテープの走行速度を監視、メンテする。
適正レベルで録音するためのバイアス調整をする。
安定したメカの維持の為に、劣化が予想される部品を先手で交換する。

真剣勝負の録音現場で故障があってはならない。
それでも録音(特に多重録音用テープレコーダーなど)の本番中に壊れることもある。
そんなときには飛んで行って修理するが、決して焦った顔をしてはいけない。
現場の雰囲気やノリを壊さないように、内心焦っていても、冷静な顔で「はい、すぐ直ります。大丈夫!」といいつつ内心「直ってくれ〜!」と祈りながら、冷や汗かきながら直す。
故障なんか当たり前の時代、結構緊張感溢れる、あんまり心安らぐ間のない日々だった。

やがてアナログレコードの時代が終わり、CDの時代がやって来る。CDマスターはデジタルテープへ。
同時にスタジオの機材もデジタル化が進み、日常的なアナログ的メカトラブルから開放されることとなった。

ソニーのデジタル録音機PCM1630。ビクターの名機DAS900の写真が無い!>

CDの音の規格は、大多数の人が聞いて良しとされる、44.1KHz/16Bit。
上限2万ヘルツ、ダイナミックレンジは90デシベル以上、アナログのスペックから考えれば画期的だった。
但しそこからはみ出た情報は捨てられた。
アナログテープにはかろうじて存在していたと思われる情報が無くなってしまった。
最近までそれが当たり前、それでいいのだと容認されて来た。
CDの音は固い、優しくない!などという声もあったが、封印され30年が経った。

そして最近、どうやら次の世代が動き出したようだ。
記録出来るデータ容量は様々なメディアで飛躍的に伸び、処理スピードも上がり、ネットなど配信環境も成熟して来た。
それが今までの制約から開放され、高音質(ハイレゾリューション)化を可能にした。大量のデータを潤沢を安くに扱える時代になったので、CDディスクの規格に収める必要がなくなって来た。音の情報を切り捨てなくても良い方法が選べるようになった。

CDやMP3など「デジタルの音」についてはかなり寂しさの漂う時代が続き、一体どうなってしまうんだろう?と心配していたが、ここへ来てCDを遥かに超えて、ハイエンドまで自由にスペックを選べる時代が到来したようだ。
ようやく始まった正しい進化だ!!
高音質(ハイレゾ)化で、CDでは切り捨てられたデータも大切にされ、さらにアナログ時代を上回る高精度な再現性をも得られることとなった。
緊張感溢れるアナログ時代を経て、CDが30年ガンバリ、そして次なる時代がやって来た!

2月6日、ビクタースタジオでJVCケンウッドの新ウッドコーンスピーカーとハイレゾシステムの業界向けの発表会がありデモに参加させて頂いた。
そこで、CD規格とハイレゾの比較を、自分のサックスと石塚まみ氏のピアノの音で確かめることができた。
ハイレゾの艶やかで豊かな優しい音色を聞いてしまうと、もはやCD規格には戻りたくないという気持ちになってしまう。そのあまりの違いがショックであった。
そしてその違いをはっきりと表現できる、小さなウッドコーンスピーカーに驚いた。僕自身も日常的に愛用しているが、このスピーカーがスタジオのモニター(ジェネレック)と互角・・以上に勝負出来ることを知り、本当にビックリした。信頼出来るハイレゾ対応!
(誇り高きウッドコーンチーム、今回大変な勝負に出たが結果は大成功!感動であった。そのことについてはまたいずれ)
すべては正しい方向に向けて進化し続けている。素晴らしい時代だ!

<時を同じくして開始されたビクタースタジオ運営のハイレゾ配信サイト>

今までハイレゾのことを一部マニアの世界のことだろうと、距離をおいていたけれど向こうから近づいて来た!ごく自然に近づいてきた。

デジタルのハード/ソフトが進化することによって音の世界をはじめ、多くの「究極」を追求できるようになったのだと思う。
ちゃんと世の中、理想に向かっている。着実に進化している。その大きな感慨に浸ることが出来た。
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僕は未だにビクタースタジオに出入りさせてもらっている。
何と幸せなことか。。まもなく50年!!感謝!
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P.S.(2014.2.13)
ひとつ忘れていたことがあります。
僕は最近聴覚が衰えて来た感じで、会話する時聞き返すことが多くなり、いずれ補聴器のお世話にでもならないとイケナイのかな、と感じていました。
明らかに高域周波数が聞こえなくなっています。(例えば5KHzで-10bd以上?そのうち測定してみよう・・> <;)
そんな状態でこのイベントに参加、僕にはよく分からないんだろうなと半ば諦めていました。
でも実際に聞いてみると何故か違いがよく分かる。自分の耳のことは忘れてしまって。。
ハイレゾの音ってなんなのか?
不思議に思いつつ・・音が耳に届くというより、直接心に届くのかな?と思ってみたりしました。

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