ビクター築地スタジオの秘密

昭和40年から4年間、築地にあったビクタースタジオの中庭で僕は水汲みをしていた。

スタジオでの音作りには欠かせない、声や楽器の音に響きをつける残響装置。全てがアナログのとても原始的な昭和の時代、その中の一つが風呂場のような部屋(エコールーム)で響かせた音をマイクで拾うというもの。その風呂場のような部屋がビクタースタジオの中庭の地中にあった。なぜわざわざ地下に作ったのかはよくわからないが、遮音的に手っ取り早かったのかもしれない。
庭の真ん中にある秘密の蓋を開けて地下に降りていくと、全面タイル張りの、ものすごくよく響く部屋が二つ。いつもジメジメ湿気っていて独特の匂いを放っていた。マイクロフォンも錆だらけ。当時ビクタースタジオとその先の聖路加病院の間には大きな運河があったので、そのためかはよくわからないがとにかく容赦なく水が染み出してくる。そしてその水を定期的に汲み出さないと大変なことになる。というわけで当然水汲みは新人の僕の大切な仕事となった。のどかな時代のお話しでした。

写真も貴重な時代、下手な絵でご勘弁を。

なかなか味わいのある時代でした。

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