Triste(トリスチ)


天気の良い日曜日、上野公園で、ボサノバの神様、アントニオ・カルロス・ジョビンの「トリスチ」を演奏してみた。しっとりとして、お洒落で、爽やかで、僕の大好きな曲である、が。
それまでは、みんなの知っていそうな有名曲や、気合いの入るオリジナルやジャズ曲をやっていたが、そろそろ気分を変えて、としっとり「トリスチ」を演奏し始めると・・
それまで20人以上はいたと思われる取り巻きが、それこそ“クモの子を散らすように”いっぺんにいなくなってしまった。残ったのは最初から熱心に聞いてくれていた3人だけ。
さて・・
学ぶことが多くある、いや、学ばなければならない。
いくら自分が好きで良いと思っている曲でも、心に留めるインパクトやエネルギーがなければ、一般の人にはすぐ見抜かれて、つまらない、時間がもったいない、とさっさと行ってしまう。心を込めて演奏したつもりでも、なお中途半端、時と場所も違ったんだろう!見事な空回りは、いわゆるKY(空気読めない)というヤツになる・・
白紙状態で純粋に音楽だけで「勝負」することの厳しさ、面白さ!
自分が好きなだけではダメ、聞き手が好きなだけでもダメ。自分が大好きなメロディを、魂を込めて演奏する、その音にわずかでも感応してくれた人の心の隙間にそっと入り込み、扉を開けてもらう・・この息がぴたりとあった時、人は足を止めてくれる。そして本気で付き合ってくれる。・・と理屈で考えるとカッコいいが、なかなかそうはいかない。
自分と人との繋がりの、少し愉快な、そして真剣な「人生ゲーム」のようなものか。
お客様は鏡、神様。
でも「トリスチ」はやっぱり名曲だ!

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安曇野2(2009.5.21.発売)
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