カラオケとナマ(生)オケ


最近のカラオケ事情がどう変化しているのかはよく分からないが、その昔カラオケの出現によって、多くのプロミュージシャン達が職を失ったことは確かだ。ナマオケの原点、酒場を練り歩くギターを持ったお兄さん、いわゆる「流し」もほとんど姿を消した。ギター一本、自分のノドで客を酔わせる。いつでもどこでも、客のリクエストを受けて、しみじみと聞かせる。客も一緒になって歌う。最後の頃の相場は3曲千円ぐらいだったかな?そんな文化がこの数十年でアッという間に消し飛んだ。そしてほとんどがカラオケという新しい形に置き換わった。
カラオケは得てして自分だけの世界。もちろん中には聞き手を魅了してしまう人もいるだろうが、大抵の場合、“お互い迷惑がらない”という共通ルールのもとにお互いが元気になるという、独特の愉快な世界のようだ。まあ、これからはそんなカラオケ一辺倒の世界もまた変わって行くのかも知れないが・・。昔の歌声喫茶のようなものも復活しつつある、というような話しも聞く。

さて、同じカラオケでも僕のストリート活動に欠かせないのがポータブルカラオケ。サックス一本のメロディーに対し、カラオケで音楽の3要素の残り2つ、ハーモニーとリズムを補う。これにより、オリジナル曲を含め、あらゆる曲を過ぎ行く人に音楽として(?)聞いてもらえる。ニューヨークなどではサックス一本で戦っている強者もいると聞くが、僕には到底出来ない。で僕の場合、オリジナル制作の自分専用オケを使用する。オケは数多く作っているが、僕自身が心を込めて楽しく演奏出来るものをセレクト、あるいは改造を重ね、使っている。オケはピアノや生ギターを使用したものもあるが、シンセサイザーによるものが多い。僕の音楽表現に合わせ、まず僕自身が気持ち良く、そして道行く人達にも気持ち良く届くことを第一義とし作り上げて行く。ある程度時間をかけ、練り上げも必要な大切な道具だ。今の時代だから出来る演奏方法・・お金がなくてバックミュージシャンを雇えなくても何とかなる、そんな時代だ。
技術的には少し前まではとても難しかったことの数々が、この10年で簡単に出来るようになった。シンセサイザーの発達、自宅でのマルチレコーディング、音源のデジタル化、テープに代わるメモリーの大容量化、膨大な曲数の中から瞬時にセレクトして再生出来るiPodなどの登場、etc.・・・おかげで独り舞台のストリート、ヘブンアーティストの資格も取れた。(僕は元々スタジオのエンジニアだったので、このようなことがどんなにスゴいことかを少々理解出来、その偉大なる技術進歩の恩恵の前に、やたらと感謝してしまうのである!)
もしナマオケで同じようなことをやろうとしたら・・バックミュージシャンへの多大なギャラ、譜面の準備、充分なリハ、音楽の方向性やそれぞれの資質の擦り合わせ、空気を読む(KY)臨機応変な対応、その他色々・・ビジネスを前提にしたものでない限り、成り立たないだろう。とてもじゃないが投げ銭でやってられる世界ではない。売れっ子になっていれば問題無いが・・これは夢(もちろん夢は持ち続ける!)。
ということで、僕にとってカラオケセットは、素直で従順で安価な良き家来である。今の時代に感謝!カラオケに(とりあえず)満足、である。
でも最後に一言、所詮カラオケは、生身の人がいる“ナマオケ”にはもちろんかなわない。人が寄り添って生まれるエネルギーや創造力は、瞬時に思いもよらぬ新たな感動を生み出すからである!
いずれ機会を見て僕の家来を紹介することにする。

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